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5年間引きこもりだった元カリスマナンパ師に教わった コミュ障改善の本質

対人恐怖が原因の引きこもり生活のあと、努力してカリスマナンパ師になった高石宏輔(ひろすけ)氏。ナンパの経験などを通して培った知見を、筆者は彼の開く講座と、取材で教わった。リラックスして話すことが大切な意味、気功によってコミュ障を体の動きから改善する試み、コミュ障という概念に対する意見などを記事にまとめた。

 

従来のコミュ障克服法では治せなかった僕 

 巷ではコミュニケーションが上手くない人を、「コミュニケーションに障害のある人」、略して「コミュ障」と呼ぶ(※)。コミュ障の症状は様々。職場の人や学校の同級生と仲良くなれない、「気を遣えないね」とよく言われる、目を見て話せない、周りから疎まれる、いじめられる…など。友達が少なく、就業後や休日も一緒に遊べる人がいないので、部屋に引きこもる人もいる。

 

※正式な病名ではなく、若者を中心に用いられる俗語( “ネクラ” と同じようなもの)を指す

 

 世の中にはたくさんのコミュ障がいる。

 なぜ、人はコミュ障になるのだろうか。

 個人的な話になってしまうが、筆者の僕は周りからしょっちゅうコミュ障コミュ障と言われるタイプである。過去にいじめられた経験からか、人と対峙するとよく緊張してしまう。人の目を見て話せず、やたら肩に力が入り、挙動不審な言動になってしまい、一部の人から不気味に思われたりする。世間的にも、コミュ障の原因とは昔いじめや虐待を受けたトラウマだとか、ゲームのしすぎやマンガの読みすぎなどが挙げられることが多い。

 コミュ障を克服するには、何をすれば良いのだろうか。改善方法として、人とたくさん話すように心がけたり、緊張しないようにおまじないをかけたりすることが挙げられる。

 僕もネットや本に書いてあった改善方法をいくつか試してみた。僕は内向的で、元々人とあまり話したくないタイプだが、色々な場所に顔を出して、ためらう体を叱咤してエイッと初対面の人に何度も話しかけてみた。本に書いてあったテクニックを試したり、帰りの電車ではその日の会話を振り返って一人反省会を開き、スマートフォンで[空気読む 方法]などとググり、改善策を調べた。

 そんなことを1年くらい続けて、少しくらい会話が上達するかと思いきや、コミュニケーションの悩みが全然解消されなかった。それどころか、悪化した。なめらかな会話を10往復以上続けることが目標だったのが、流暢に喋れるようになるどころか、吃ってきた。職場で上司に報告をするとき、言葉が出なくてそのまま10秒が経過し、不審に思われることも度々あった。

 何故だろうか、ネットや本に書いてある通りに頑張れば頑張るほど、会話が不自然になってきたのだ。話し相手とテンションが合わず、会話が噛み合わなくなったりと、頑張る前の方がマシだった気がするくらいだ。ノウハウ通りにやればやるほど、自分の言動が本当の自分から離れていくようだった。話し相手も僕のトークに対して居心地の悪そうな気配を出す。

 何かが違うぞと僕は思った。このまま頑張っても、更におかしくなっていくだけだ。

 そんなとき、僕はカウンセラーの高石宏輔(35)氏の存在を知った。彼はほんの数年前にカリスマナンパ師として名を馳せた人物で、現在は1日1人限定でカウンセリングをしている。

 高石氏に興味を持って半年ほど経った今、僕は思う。

「コミュ障」という言葉が蔓延している世の中で、高石氏のナンパとカウンセリングの経験から抽出された、コミュニケーション改善に関する考えと指導法は、コミュ障という言葉を絶滅させる可能性を秘めている。

 

5年間の引きこもり後、カリスマナンパ師へ

 高石氏は今、ナンパをしていないが、現役時代は百人以上の女性とセックスした。一時期はキャバクラや風俗のスカウトの職に就き、1日百人以上の女性に声をかけた。

 ナンパ師と聞くとどのようなイメージが浮かぶだろうか。チャラついた感じや、金髪、ピアスなどが浮かぶかもしれない。

 彼を初めて見たとき、カリスマナンパ師のイメージとはかけ離れていた。内向的な青年を思わせる、控えめで少し恥ずかしそうな笑顔。話し方も流暢で押しの強い感じではなく、ゆっくりと、ときに黙り込んだりしながら話す。世間一般で思い描かれるような話すのが得意そうな社交的な人間ではない。

 だが、彼の静かな低い声は心に直接響き、ゆったりとした品の良い仕草は、包容力と色気を感じさせた。百戦錬磨のナンパ経験を物語る不思議な色気があった。慶應を中退し、プルーストの『失われた時を求めて』を愛読し、主張しすぎないデザインのハイブランドファッションを好む彼はなぜナンパをしたのだろうか。

 目的は、カウンセラーとしての腕を磨くためだったと言う。彼は女性との会話の中で様々なカウンセリングの技術を試した。

 女性の話をじっくりと傾聴しながら関係性を深めたり、声をかける際、体の動きから女性の声を想像して、その声色に合わせた声で話しかけたりした。拒絶しようとしている女性に対し「貶す」のと「褒める」のを交互に繰り返し、強引に心を開かせセックスに持ち込んだりと、かなりストイックで、破天荒な試みをしていた。

 そんな話を聞くと信じられないが、彼は元々対人恐怖症で、ナンパをする前の20歳から25歳までは鬱とパニック障害で引きこもっていた。学生時代は本ばかり読んで、女の子とどう接していいのか分からなかった。女の子と目が合うと、怖くてすぐに目をそらしていたと言う。

 そんなナンパに向いてなさそうな当時の彼は、試行錯誤してナンパとカウンセリングの能力を高めていく。その経過で、コミュニケーション改善に関する独自の考えを持つようになった。

 現在高石氏は、カウンセリング業と並行して、定期的にコミュニケーション改善に関する講座を開催している。そこでは、彼の考えに基づいた独特な手法で、講習生を指導している。講座は全部で5種類あり、その一つに『ラポールと身体知』という、いわば入門編の講座がある。

 2015年の初夏に、僕は『ラポールと身体知』を受講した。

 コミュニケーションの講座と聞くと、二人一組になって会話のロールプレイングをやる、みたいなことを想像されるかもしれない。しかし、想像していたものとは全く違った。当日、僕と他の講習生5人は、両腕を前後に振る「スワイショウ」という気功の基礎動作を2時間ぶっ通しで行った。

 会場は7人入っても余裕がある広い空間だった。灰色の絨毯に、天井にはオレンジ色のわずかな照明、眠気を誘発するような落ち着いた暗さの中で静かなピアノの曲が流れていた。そんな場所で、僕ら講習生が無言でひたすら腕を振っている光景はかなり怪しいセミナーみたいだった。

 

会話はリラックスが大事。体の緊張を気功で取り除く

  腕を前後に振る「スワイショウ」は、体に入っている余分な緊張を取ることが目的の動きだ。高石氏の指示に従い、両腕を「ぶらーんぶらーん」としていると、だんだん緊張が取れてリラックスした。講座ではこのスワイショウをはじめ、緊張が取れてリラックスする効果の気功の動作を計4時間行った。効果はてきめん。講座の終わり、僕の体は風呂上りと同じくらい体の力が抜けて、普段あまり感じたことのないようなリラックス状態だった。

 気功をしてリラックスするのと、コミュ障改善と、何の関係があるのだろうか。

 僕はリラックスの心地よさに浸りつつ、不思議でたまらなかった。なぜ高石氏は気功を教えるのだろう。

 コミュニケーション力を向上させたい人は、マニュアル本やネット記事を読んでノウハウを知り、現状を改善させようとする。「この場面ではこうしなくてはいけない!」と気負って、緊張が増す。そうして、そのノウハウ自体がコミュ障誕生のきっかけになってしまうこともある。

 僕もそうなってしまったのだが、そんなときに高石氏の講座で気功をした。

 会話がうまくいかないと悩む人の多くは、会話の内容自体に目を向けることで改善を図るが、高石氏の講座では会話の内容ではなく「体」に目を向ける。

 自分の体にある余計な緊張を自覚し、その力を抜くことによって、コミュニケーションにおける自分のパフォーマンスを向上させることができるという。人はコミュニケーションに苦労しているとき、猫背になったり、肩が上がったりと、体に余計な力が入ることが多い。

 振り返ると、僕も猫背のときは周囲の人を怖く感じ、被害妄想が肥大化していた。肩に力が入っていたときは、不安や余裕のなさを感じていた。それが気功を始めた結果、いつも猫背だった背筋が日を経るごとに徐々に伸びてきた。

 そして、不思議なことに、背がすっと伸びるにつれて対人恐怖がやわらいできたのだ。たくさんの人に話しかけたりして、頑張って克服したわけではない。いつのまにか「あっ、(人が)そんなに怖くなくなってる」と感じるようになった。そして、いつの間にか吃りも治り始めていた。

 思い出してみてほしい。あなたが気の置けない仲間と楽しく話しているとき、はたして体は緊張していただろうか? 誰だって、会話中にリラックスしているときもあれば緊張しているときもあるだろうが、そのときはとてもリラックスしていたのではないか?

 余計な緊張が解れると、緊張していたときよりもスムーズに会話できる。僕も気功をやったことで、以前より人と話しやすくなったと感じている。

 

緊張は「恐れ」から。理解することで抜けていく

  もちろん気功で緊張を抜けば確実に会話上手になれるわけではない。気功はあくまで、改善を効率化する一つの手段に過ぎない。やはり会話の実戦を重ねることが必須だ。

 またいくら事前にリラックスしても、いざ会話の場で苦手な相手を前にしたら緊張がぶり返してしまうのではないか。

 緊張の原因とは何だろうか。どうすれば緊張しなくなるのだろうか。

 取材中、高石氏はこう語った。

「コミュニケーションの中で、緊張するっていうのは、基本的には“恐れ”から来ていると僕は思っているんですよ」

 高石氏は一時期風俗のスカウトをしていた。当然、多くの風俗嬢と話をする機会があった。当時彼は風俗嬢を「嫌なやつら」と見なしていたという。

 いわく、風俗嬢はだらしない人が多かった。必ず遅刻する人もいれば、話しかけても「別に?」と返す人もいた。

 最初はその態度にイラッとしていた高石氏(わりに感情的な人なのだ)。風俗嬢に会うときは、頭の中で【風俗嬢=嫌なやつ】と想像してしまい、自然と戦う姿勢に入るようになった。高石氏いわく、戦う姿勢とはどこか緊張がある状態であり、戦うというのは怖いということ。彼は元々女性恐怖症だった過去もある。

 しかし、色んな風俗嬢と話していくと、「彼女らのこういう態度は、仕方ないんだなあ」と思うようになったという。

「毎日彼女たちのような生活を送ってたら、人に対して疑いばっかり持つようになってしまったり、自分の気持ちをきちんと他人に言えなくなってしまったりするのも仕方ないのかなと思ったんです。でも、それでもどうにかして生きようとしているんだなあと思いました。

 すると、『別に?』って言われても、ああなんか言いづらいんだろうなと思えるんです。それが実際そうなのかは分からないですけど、『いや、別にってどういうこと? もうちょっと思ってることあるんじゃないの?』って余裕をもって聞けるようになるんです。

 相手が嫌なやつというわけではなく、自分が相手のことをわかっていなかったんだなあって思うと、戦おうとして入っていた緊張がすっと抜けるんです。そうなると、会話も以前より弾むようになったりします。

 でも、風俗嬢のそういう事情を理解してないと、いくら肩の力を抜くことが大事だとしても、毎回風俗嬢を前にするたびに、やっぱり自動的に力が入ったでしょうね。…なんか、わかります?」

 高石氏はよくこういう、聞いてる人を混乱させる話し方をする。すると、聞いてる方はその曖昧で抽象的な話についてあれこれと考えざるをえなくなる。

 ノウハウをスパッと説明してしまうマニュアル本を読むと、自分で考えることを放棄してしまう。これは僕や、コミュ障と呼ばれる人の多くがハマっているのではないだろうか。

 人は自分の力で考え、試行錯誤することで成長するということを彼は大事にしているのだろう。

 

そもそも「コミュ障を治す」という言葉自体に語弊がある

 「そもそも『コミュ障治す』って語弊がありますよね」

 取材で高石氏は語った。

「誰の喋り方に対しても、問題を見出すことはできますよね。だから、誰でもコミュ障ともいえるし、また、誰のこともコミュ障と言えないかもしれません。

 なのにコミュ障っていう言葉が存在して、そう言われる人がいるっていうのは、誰かがその人のことを『コミュ障だ』って言ったり、そう言われた人が『ああ自分はそういう障害なんだ』と思うようになったりということが、世の中で起きた、ただそれだけのことだと思います。

 誰でも、自分の話し方とか人との接し方を、ちょっとずつ上手にできるんじゃないですかね? たとえば、誰かと話して、『もうちょっと、こうやって話せばよかったなあ』とか、『こういう風に聞けばよかったなあ』って思ったりするものだと思うんですよ、人間って。

 そうやって自分のやったことを反省して、『じゃあ次はこうやってみようかな』と思える機能を誰でも持ってると僕は思ってるんです。自然であればそうなるんじゃないですかね?」

 だが、「お前はコミュ障だ」と言われたことをきっかけに、歯車が狂ってしまう人もいる。

「コミュ障だって言われても、次の日とかに『昨日、(コミュ障と言われたことに対して)なんて返してあげたら良かったのかなあ』って純粋に思えたらいいんですけど、言われたら自己嫌悪になったり、心配になったりしてしまいますよね。

 それでネットで[コミュ障 治し方]って検索して、どうすれば間違いがないかを知ろうとして、余計こじらせていくという。他人の意見で自分を固めてしまって…自分の気持ちや感覚から離れていっちゃうんです」

 僕も、コミュ障という言葉をやたらと使ってしまっていることに気づいた。

 Ask.fmで高石氏に「所謂、『コミュ障』は治るものなのでしょうか?」と、質問が寄せられたときの解答がある。

「本人が『コミュ障』て言うとき、他人から見ると一部がおかしいだけなんですよね。その一部のせいで、他人とのコミュニケーションがスムーズにいっていないだけなのに、本人は全体的に『コミュ障』だと思っていることが多いように思います。だから、結構簡単に改善されるものだと思います。」

 

 講座の中で、彼はそのおかしい一部の動きを見つけ、それをすっと改善させる。僕も知らない人と接するのが地獄の苦しみだったのに、今ではだいぶ生きやすくなった。

 記事で紹介した講座は『ラポールと身体知』だけだが、他にも4つの講座が開かれている。話の聞き方を、カウンセリングのロールプレイで学ぶ『カウンセリングワークショップ』など、コミュニケーションの講座らしいものもあれば、『催眠誘導ワークショップ』というものもある。

 実は催眠療法もできる高石氏。ナンパやスカウトをしていた時代は、知り合った女性数百人に催眠をかけることで、腕を磨いた。

 一見怪しいが、話すうちに彼の魅力に引き込まれる不思議な人だった。彼の思想や活動内容には、ツイッター書籍、ブログ『ラポールと身体知』などで触れることができる。

 

 

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