☆即興ストーリー 荒野の心

 

 

不気味な朝の目覚め。

 

「今宵は月の小石を持っておいで」

 

昨晩、あの人は言った。

だから、ぼくは探した。

しかし、見当たらなかった。月の小石とは何だろう? アポロ11号が持って帰った的な、本当に、ものすごくレアなものだろうか? しかし、そんな大規模な小石を、ぼくが持って帰れるわけがない。

 

だから、どうにかして探さなきゃと思ったが、何の手がかりすらもなく、途方に暮れていた。もうすぐ、ぼくの知り合いは死んでしまうのに。

 

あの人は、月の小石さえあれば、ぼくの知り合いの命を救えるなどとうそぶいた。ぼくは、信じるぞ、なぜなら、それしか知り合いの命を救うアテがないからだ。それにしても、一切、手がかりがわからず、途方に暮れていた。

 

不気味な朝。

 

上を見上げると紫のような青空。

 

もうすぐ、地球は破滅してしまうのだろうか。

 

だからといって、ぼくらは死ぬわけにはいかない。なぜなら、・・・・・・・なぜなら・・・・・・・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

停止した。

 

もう、何にもできる気がしない。何をどうすればいいか全くわからないし、それにしても、あの人とのぼくとの会話は、非科学的すぎて、信じられるはずもなく、どうしようもなく、君を助けたいのに!!!!!!!!!

 

君が好きなんだ!!!!!!!!!

こんな言葉を使うのもどうかと思うが、愛してるんだ!!!!!!!!! 陳腐だ!!!!!!!! 陳腐な感情だ!!!!!!!! 叫びつづけるのすら陳腐で恥ずかしくなるしもうどうでもいいと思ってしまいそうになる辛い嫌いおれが嫌い。

月の小石だけは見つけられないと駄目だ。なぜなら、君が好きだからだ。だからといってどう探せばいいかわからない、だけど闇雲に探す他方法がないじゃないか!!!!!!!!!それしか方法がないのだろうか・・・・?

 

よ~く、・・・・・・・・・よ~く・・・・・・・・・・・・・・・考えてみよう。

 

ある日のことだ、ぼくは君のためにラブレターなんていうクソ恥ずかしい時代の産物みたいなものをこしらえた。まあ、とりあえず、無印良品の便せんと封筒を用いて、シンプルかつ丁寧な文字で埋めた、想いはシンプルかつ丁寧で埋めることは叶わなかった。いつものパターンだと思った、どうせ、失恋する、ぼくの好きな君は、ぼくの手元へ、置くことができない。

 

不気味な、朝だった。

だから、ぼくは君に渡そうとした。ラブレター(笑)をものすごい勢いで、引かれてしまうくらいの勇気でもって、渡そうとした。引かれてしまうことすらいつものことで、もう、どうしようもなかったし、こんな自分はさっさと死ねばいいと思っていた。だけど想いを伝えることをどうしても我慢することができないんだよ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!

 

「今宵は月の小石を持っておいで」

 

今宵は月の小石を持っておいで? 月の小石って何だろう。アポロ11号が持って帰るような非現実的なものではないとして・・・・・・・・・・・・というか、もしそういう手段しかないのなら、そもそもが無理な話で、っていうかもしそんな金があったら君をアメリカの最先端医療技術に触れられるくらいの何千万円を余裕で確保することができるだろう。だからぼくは、他の手段を考えてみる必要があるのだ。というか、アポロ11号系列の手段はないものとして考えるべきなのかもしれない。

 

何とな~く、無印良品が頭に引っかかった。

 

君に無印良品の良さを教えてもらったんだ。それは、本当に何気ない会話においてだった。無印良品は良い、と。無印良品は良い、と。無印良品は良い、と。無印良品は良い、と。無印良品は良い、と。無印良品は良い、と。無印良品は良い、と。無印良品は良い、と。無印良品は良い、と。無印良品は良い、と。無印良品は良い、と。洗脳だった。洗脳でしかなかった。まるでロボットのように、君はそういうことをくり返した。そんな君の侵された感じが、何となく、好印象を持てたというよりか面白かった君に好印象を持ったなぜなら君はかわいかったから君の無邪気な笑顔が本当に忘れられなくって!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!

 

非常に無印良品の中のレパートリーとしてこの世にあるあの小石が気になった。

 

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www.muji.net

 

 

全、無印良品の商品の中で最も『月の小石』っぽい、もちろんこの素焼きストーンが月なんかで採取されたものではないなんてことはこの文章を読んでいるあなたよりも100

億光年も早く素早く瞬時に気づいていたよでもおれにはこの手法しかないんだよおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!

 

とにかくぼくはこの商品に手がかりがあると思ったなぜならある物事へ繋がったからだ。

 

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www.amazon.co.jp

 

これも君が教えてくれたんだ。アーティスト・七尾旅人が一人で作った3枚組のアルバム『911FANTASIA』アメリカの月面着陸から、同時多発テロに遭うところまで、アメリカの新帝国主義に堂々疑問符を投げかけた大作、というようなあらすじがどこかに書かれていたような気がする。

 

このアルバムは、本当に良かった。手に汗握った。感動した。君のセンスは素晴らしいと思って、こんな女の子に恋をした自分が誇らしかった。しかし、なぜ、このアルバムと素焼きストーンが繋がったんだろう?・・・・・・・・・・・・・・・・・そう言えば、あの曲だ、ぼくはiPhoneにイヤホンを差し込み、耳に突っ込んで二曲目の『荒野』を再生した。

 

『荒野』というのは、アポロ11号が月面へ着陸したことと、それによって影響された全世界の人たちのことを描いた10分の曲であった。 

 

なぜ荒野かというと、アポロ11号が月面へ着陸し、船員たちが見た景色が『荒野』であるから、ということ、。

 

『That`s one small step for a man,one giant leap for mankind.』

一人の男にとっては小さな一歩だが、人類にとっては大きな一歩だ

 

「荒野・・・・・・・・・月の・・・・・・・・・荒野・・・・・・・・・・ニールアームストロングは台詞を忘れている。それで・・・・・・・・・おーろ、おーろ、してーる」

 

曲は進む。

 

「僕は、たずねる。僕は彼らにこうたずねる。どうへゆくつもりだい? こんな居心地の良い場所を離れて、どこへ行くつもりだい?こんな居心地のいい場所(地球)を離、れ、て」

 

彼ら(アメリカ)はこう答える。

 

『荒野』

 

荒野・・・・・・・・・・・・・・・・・君の、荒野。真新しい、荒野。夢にまで見た、荒野。

 

素焼きストーン。”素”の、ストーン。汚されていない、ストーン。真新しい、ストーン。

何て恥ずかしい類推だろう。こんなの、デタラメでしかないじゃないか。でも、他に君を救う手立てなんてあるか? これしかないだろう。

 

 

 

・・・・・・・・・・・・これで良いはずがない!!!!!!!!!!!!!!!!!限界なのか?・・・・・・・・・・・・

 

・・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ・・・・・・・・・・・・・・・・

 

思えば、君との未来も、荒野なのかもしれない。

少なくとも、ぼくにとっては、荒野だった。

真新しい荒野、夢にまで見た荒野。いつも輝いている、荒野。見通しの利かなく、未知で、ドキドキする荒野。アポロ11号というのは、ぼくのラブレターなのか。君という名の月面着陸を成し遂げるのは、アポロ11号なのか。無事、打ち上げて、そして君の荒野に足を踏み入れる。そのとき、ぼくは何を考えるだろう。荒野・・・・・・・・・・月の・・・・・・・・・荒野・・・・・・・・・真新しい・・・・・・・・・荒野・・・・・・・・・夢にまで見た・・・・・・・・・荒野

 

 

 

君が好きだ。

 

 

 

ラブレターを届けよう、と思った。

ラブレターを届けないことに、月面へ着陸する方法はないじゃないか!

 

そもそもこのぼくが、現物の月の小石を届けられるわけがないじゃないか! それくらい、あの人だって承知の上だろう。あの人は、やたら文学的表現が好きだったし、夏目漱石の「月が綺麗ですね」みたいなことが頭によぎった結果、わざわざそういう変な表現を使ったんだろう。

 

つまり、想いを伝えろ、ということだったんだ。

 

「今宵は、月の小石を持っておいで」

 

おれが、試されていたのは、君の病気を治すことではない。君の病気の、そばにいてあげることだったんだ。君のことを一心に願っていた。だから、こういう風に悩むハメになった。しかし、悩んでいただけだったんだろう。具体的な行動は何一つ、実行できていなかった。つーか何だ? 月の小石なんていう表現の意味が、まだ、これっぽっちもよくわからない。しかし、それであるが故に、ぼくは、君へと渡したいものを渡すことしか今君に対して君のために(君のために?)できることはないんじゃないか? 病室で、孤独な君に。孤独かどうかはわからないけれど、とりあえず、君のことを強く想っている人間が、ぼく以外にもいるかもしれないけれど、また一人、ここにいる、ということだけはわかってもらえたなら。ついでに素焼きストーンも持っていこうかしら。君の好きな無印良品の、エッセンシャルオイル・スウィートオレンジも添えて。

 

家を出た。

不気味な朝の目覚め何て言ったのは、何でだったんだろう。ごくふつうの青空が広がっているだけだ。