☆即興ストーリー 愛って何?

「君に教えよう。愛というのはな、永遠不滅のものであり、素晴らしいものだ! そして、愛さえあれば、何もかもが完結するのだ。All need is love! 愛さえば何でもできる! おお! 愛は魅惑のエクスプロージョン!」

 

欧米人のような大げさな身振り手振りで、岡田くんは言った。私は、彼がすごく馬鹿だと思った。

 

「あっ、そう」

 

私はそう吐き捨てた。うつむいて彼から目を外した。

 

「いやあ。なんてつれない反応をするんだマイハニー! これから僕と踊らないかい?」

 

岡田は私の手を取った。

 

「馬鹿じゃないの?」私は手を払いのけた。

 

「Oh・・・・・」

 

と、岡田は悲しそうな表情で悲しそうな声を出す。

 

「なんでわかってくれないんだマイハニー」そもそも、私あなたのハニーじゃないし。男って単純。

 

・・・・世の男も、岡田ほど単純じゃないはずだ。なぜ、タイタニックを昨日観ただけでこんなにロマンチックな気分になれるのだ。

 

いきなり、岡田が私の手にキスをしていた。

 

「は!?」

 

私は、いつのまにか毛虫を触っていたときするような反射的な動作で手を素早くひっこめていた。時速300キロは超してそうなくらい速い手つきだった。

 

彼の目を見てゾッとした。彼の目は、とても潤んでいた。私を、とても愛おしげに見つめている、雰囲気を出していた。

 

「わたしには、君しか見えないんだよ。さあマイハニー、結婚しよう」

 

私は思いっきり岡田の頬を平手打ちした。パーンッ、と、本当に響き渡る音がした。我ながら心地が良くなったくらいだ。

 

岡田は頬をおさえながら横を向き、そして目だけこちらを見て言った(本当にキモいポーズだった)。

 

「なんでだい?ハニー。どうして、僕を気に入らないんだい?」

 

「教えてやろうか? それはな、てめえの言う愛が大っ嫌いだからだよ! てめえの愛は、自己完結なんだ。自己満足なんだ。愛情を自分の中に感じたらそれ即ち『愛』だと勘違いしてるんだ! 本当の愛っつーもんはな・・・・・ものすごく、難しいものなんだよ。伝わろうとしても、伝わらないんだよ。その状態を良しとして、相手に伝わらない状態を保つことをしなくちゃいけないときもあるんだよ。・・・・・ただのロマンチストに、本物の愛が実行できるもんか・・。理想ばかり語りやがって、簡単に感情移入しやがって。てめえみたいな社会能力に欠けたやつに愛を注がれたって、全然幸せにはならねえんだよ!」

 

最後の方は、言っていて心が痛んだ。なんだか、ひどいことを言っているような気がした。

 

岡田は、舌打ちをした。

 

「死ね」

 

そう言って、踵を返し私の許から去っていった。

 

私は・・・・・・・・すごく悲しくなった。

 

何でなの? 何でなの? 私のどこが悪いの? だって私は、正当な意見を言っただけじゃない! 言い方が悪かったかもしれないけれど、でも、今までも私は、岡田にそういうようなことを、今より優しい声音と言い方で、何度も何度も言ってきた。それでも岡田は、相変わらずあんな感じで、何にもわかってなかった。それで、今日、本音を的確に言ったら、なんか暴言を言われて、つーか「死ね」って言われて、去られた。私は・・・・・岡田のことが嫌いではなかったのに。。。。。。

 

なんで・・・・・女なんかに生まれてきたんだろう。

男が鈍すぎるがゆえ、何も伝わらないし、何もわかっちゃくれないし・・・・・。

それでも、女は男が好きになる。好きにならなくちゃいけない。好きになるよう宿命づけられている。

損で、救いのない決まりだと思う。。。。

 

でも・・・・・やっぱり・・・・・最終的には、「愛」にすがるしかないのかな・・・・・・と思う。

 

女は、辛い。